令和6年度 公開講座を開催しました 2024/9/14

「ひとの輪を紡ぐ場所 ほっとくらぶ」

〜障がいのあるお子さんとご家族が「ほっ」とできる時間を〜

講師:ほっとくらぶ 斉藤雅恵 さん(看護師・医療的ケア児等コーディネーター)

斉藤雅恵さんは、訪問看護師として、長年、障がいのあるお子さんとそのご家族を支えてこられました。また、重い障がいや病気とともに生きる子どもとそのご家族が、みんなとともに豊かで楽しい人生を歩めるよう、2015年に有志で「ほっとくらぶ」を立ち上げ、

❤️ ほっと 心温まる場所

❤️ ほっと やすらげる場所 

ホットな仲間と出会い、みんなの笑顔があふれる楽しいときを紡ぎ続けていらっしゃいます。

「ほっとくらぶ」では、日帰りキャンプや一泊二日のバス旅行、生演奏を楽しむクリスマス会など、障がいのあるお子さんとそのご家族のお出かけイベントを年数回企画。看護師さんを中心に医療従事者がケアをサポート。さらに、ボランティアの大人も子どもも大勢集まって、みんなで楽しい時間を過ごしていらっしゃるとのこと。

今回は、「ほっとくらぶ」の立ち上げから、現在までの活動についてお話を伺いました。

① ほっとくらぶができるまで

「子育てが落ち着いて、第二の看護師人生の始まりが、こども病院から退院後の子どもさんへの訪問看護でした。病院の在宅支援室や関係機関と連絡を取りながらの手探りのケア。ご家族・お母さんといっしょにお子さんの成長を見守り、元気で過ごせるような工夫を日々考えていました。」と斉藤さん。

「小児科経験はありましたが、在宅生活をされている医療的ケア児の姿も、その疾患や病状も想像ができず……」「わからないことは興味を持って聞く。“ この子のために ” 。医療機器についても、専門の人、そこの人に聞く。」と話され、なかでも「ひととの出会い、すべてが勉強。」のことばが印象的でした。

② ほっとくらぶを考えるきっかけ

「在宅生活でのケアは、ご家族、ほぼお母さんに任されている状態。24時間、精神的緊張が続き、お母さんの心と体が休まる時間がなさすぎる」「気分転換ができればいいのに」「もっと話を聴く時間も必要」「きょうだい児さんとかかわる時間も必要」と実感。

そんなとき、東京の診療所の方のお話を聞く機会があり、診療所の子どもたちを長野県筑北村へ連れてきて、さまざまな体験をされている団体の活動知り、「なぜ長野県の中ではできないのか?」と、ふと思ったことをきっかけに、斉藤さんは有志を集めることから始めたそう。

また、スタッフの人数や動き、資金集めや助成金について、周知はどうするのか、などなど、東京の団体「親子はねやすめ」にノウハウを学び、さらに助成金申請をするなかで、他団体とも繋がっていったそうです。

③ ほっとくらぶが始動

「2015年、東京の団体のスタッフの方、筑北村の有志の方の協力も得て、筑北村でのお泊まり企画が実現。ほかにも、こども病院のスタッフ、養護学校の先生やその子どもたちも集まってくれたことで、障がいのあるお子さんのきょうだい児さんも羽をのばして笑顔で遊ぶことができました。その笑顔を見て、みんなも笑顔になりました。」

「医ケア児のきょうだい児さんは、いつも、当該児やお母さん、家族を気遣うやさしい子。我慢もたくさんしているでしょう。そんなきょうだい児さんたちに、ご褒美をあげたい。外でいっぱい走り回れる時間、いろんなお子さんたちと子ども同士のかかわりのなかで遊ぶ環境を用意してあげたい。」

ですから、スタッフやボランティア、サポーターさんのお子さんも大歓迎。むしろ、看護師以外の人が、バーベキューなど、ケア以外のこと楽しんでくれるおかげで笑顔を広げてくれています。荷物を持ってくれる人、子どもたちと走り回って遊んでくれる人、火おこししてくれる人も必要。

「医ケアができる方はもちろん大切ですが、それ以上に、障がい児を知っていだだくこと、お子さんが好きで、普通に手伝えること、できることをいっしょに考えてくださる方がおられるとありがたいです。」と話され、その後、2015年から、これまでの活動の様子についいて画像を見せながら紹介してくださいました。

毎年恒例となった筑北村のデイキャンプをはじめ、富士見高原リゾート 天空カート、長野県立こども病院でのクリスマス会、海や水族館へのお出かけ、北陸への一泊二日温泉旅行など、楽しい時間を紡ぎ続ける「ほっとくらぶ」。会場には、活動の様子のパネル展示も!

実は、当会会長、事務局長も、今年5月の富士見高原 天空カートの旅に参加。富士山、アルプスを一望し、焚き火でマシュマロを焼いたり、子どもたちと水陸両用の三輪車椅子に試乗したりと、めいっぱい楽しんできました。

施設の「おはなし会」で出会い、養護学校で再会したお子さんに、ここでも会えたのはもちろん、みんなで昼食をともにできたこともうれしいことでした。また、受け入れ側の富士見高原リゾート・ホテル側のサポートが万全で驚くほど。特に、医ケア児さんのために、色とりどりの刻み食や流動食まで用意されていることに感動! 長年の活動・お付き合いから生まれた相互理解なんだなぁ〜と深く思い入りました。

なお、講座後、10月には、筑北村デイキャンプにも参加。野菜を切ったり、おにぎりを握ったりとちょっとしたお手伝いをしたあとは、手作りピザとバーベキューに舌つづみ。

それにしても、デイキャンプに総勢50人が集まったのには、びっくり! 子どもたちはめいめいに思う存分遊びまわり、大人も子どもも、みんな笑顔。素敵で楽しい休日でした。


〈参加者の声〉

・斉藤さんの発想力、人を巻き込んでチャレンジしていく人間力に感動しました。

・ほっとくらぶさんの、仲間をつくる、仲間とつながる、人が協力したくなる素晴らしい活動と実践力を知ることができました。

・熱意と行動力がすごい! つながりを広げていく力に脱帽です。

・医療従事者、看護者、ご家族、それ以外のひとも、いっしょに楽しんで笑顔が広がっていく。なんてうれしいことでしょう。みんなと遊ぶことなら私にもできそうです。

・ひとの輪を紡ぐのは「ひと」なんだと実感しました。在宅で24時間ケアを続けるご家族が “ ほっと ” できる時間が必要!と考えるだけにとどまらず、行動されてきたことに感銘を受けました。斉藤さんの想いと愛情が、繋がったひとたちの心を動かしてきたのですね。


公開講座の会場では、当会の活動について、また、「いのちの本展」リニューアルに伴い、「さわる絵本」を展示紹介しました。

本と子どもの発達を考える会

本と子どもの発達を考える会 病院や特別支援学校などで、長年、本を届ける活動を続けてきたメンバーで2010年に設立。 支援の必要な子どもたちへの絵本の読み聞かせなどによる支援活動、 「支援の必要な子どもたちのための本展」・「いのちの本展」の貸出展示ほか、講演などもおこなっている。 著書『読み聞かせで発達支援 絵本でひらく心とことば』(かもがわ出版)2019.12月発行

0コメント

  • 1000 / 1000