令和3年度 第2回公開講座を開催しました 2021/11/27

「障がい児・者デイサービス 雲のポッケ」〜 利用者さんが教えてくれた たくさんの笑顔 〜

講師:赤堀明子さん(「雲のポッケ」看護師 / 元 長野県立こども病院 看護師長・初代ボランティア担当)

障がい児・者デイサービス「雲のポッケ」の立ち上げから尽力されている赤堀明子さんは、元 長野県立こども病院の看護師長さんであり、1993年の長野県立こども病院の開院直後に、わたしたちの会の設立のきっかけとなった「おはなしボランティア」をこども病院に招き入れた、当本人。今回、満を持してご登壇いただけることになりました。

まずは、「私と 本と子どもの発達を考える会のご縁について」と前置きされ、1997年から始まった「長野県立こども病院おはなしボランティア」の活動当初の写真が紹介されると、メンバーの20年前の若かりし姿に会場がどよめきました(笑)

赤堀さんは「人生には必然の出会いがあります」「本と子どもの発達を考える会は、こども病院おはなしボランティアから生まれ、自立して活動を続け、拡げているところが素晴らしい」と我々にエールを送ってくださいました。

そして、いよいよ「雲のポッケ」の紹介。「雲のポッケ」は重症心身障がい児・者とそのご家族が充実した楽しい日々を送れるよう、赤堀さんをはじめ、医療・福祉・教育・保育の経験豊かな専門家が集まって、2018年10月に開設。設置者はNPO法人 こすもけあくらぶ。

赤堀さんは、長年にわたるこども病院での看護師経験をふまえ、こう話されました。

「病院は治療。病気を治す場であり、常に問題解決が必要」「デイサービスは疾患とともに生きる日常の延長。ごく普通の生活が基本で、昨日と同じ今日、今日と同じ明日。楽しいこと、何したいかな? を考える毎日」。

そんなデイサービスでの入浴やお散歩などの日常のエピソードとともに「寄り添うということは、あるがままを受けとめること、日々を大切にすること」と話し、一冊の本を紹介されました。

『はだかのいのち』高谷 清 著(大月書店)


そして…「価値観ってなんだろう」と問いかけながら、10歳6ヶ月を生き抜いて昨年旅立った古畑明日見さんの話をされました。「病名や症例に照らし、こども病院での姿しか知らなかった私には、ポッケでの明日見さんの姿はまさに目からウロコ。寝ているまわりにヌンチャクやピストルやピアノのおもちゃを置いて、自ら選んで遊び、それを見てみんなが笑う。こんなことができる超重症児がいるのかーと本当に驚いた。」「たくさんのひとが関わり、支えていくことで、重症児もいろんなことができる可能性があるー。」会場には、明日見さんのたくさんの写真とともに、明日見さんのお母さまも駆けつけてくれました。赤堀さんは、明日見さんの母 なつみさんのことばを紹介。「明日見という名前はお父さんが。どんな時でも明日が見られるように健やかに育ってほしいと名付けました。」(〜 看護連盟アンフィニの取材記事より)

そこで『天使の着ぐるみ』おにいるそうこ 著(新日本文芸協会)を引用され「存在することのみで大切なことを伝えるいのちがある ー。 触れることで最大限の成長ができる」。「私たちは、私たちが最大限に成長できる ー  そういう使命をもって存在する魂にめぐりあった」「明日見ちゃんのもって生まれた魂が、私に、みんなにこれからも寄り添ってくれる」

「私たちもありのままの自分ができることをすればいい ー  それが生きるということ」

「感じることが大切。感性というのは、その人がどれだけ、どんなものにふれてきたかが問われる。だからこれからも磨いていきたいと思う。」と続けられました。


最後に赤堀さんが話されたのは「心に響くことばを伝えて」ということ。

「こども病院時代、「おはなしボランティア」のささやく声は病棟のどこにいても、それはまるで天から降ってくるかのように心に響いた… その声を体感してほしい」と。

ここで、赤堀さんからのたっての希望で、会のメンバーのひとりが『ラヴ・ユー・フォーエバー』ロバート・マンチ 作 乃木りか 訳 梅田俊作 絵(岩崎書店)を朗読。

赤堀さんは言います。「何人も、何百人も見送った子がいます。生還してきた子たちもいます。そして、いつでもどんなときもご家族は「大好きだよ。愛してるよ。生まれてきてくれてありがとう」と子どもを抱きしめるんです……。」

「抱っこするようにやさしく語りかけることは、だれにでもできます」「みなさんがもっていることばで、心に響くことばで、だれかを抱きしめてあげてー。」


〈 参加者の声(一部)〉

・魂をゆすぶられる講座でした。ことばの花束をもらったようです。

・心に留めておきたいことばがあふれていて、涙もあふれました。

・こどもたちのきらりと光る可能性を感じ、喜びあうことのできる「雲のポッケ」。これからも応援していきたいと思います。

・『ラヴ・ユー・フォーエバー』の読み聞かせ、祈りのようなことば、心に響く貴重な体験でした。

・精一杯、命を輝かせてきたお子さんの話に「いのち」と「生きること」、「ことばを届けること」の重さを涙涙で再認識しました。

・自分が自分の意志で、絵本を、ことばや想いを届けることを、そうして魂の交換のような時間を持つことを、自身の歓びとして生きているんだと実感できました。声とことばでやさしさと元気を届けるひとでありたいです。


公開講座の会場では、当会が学校巡回展示している「いのちの本展 〜 みんないっしょに生きている 〜」より、障害や病気への理解を深めるための絵本を厳選して展示しました。

(「いのちの本展」は、コロナ禍、令和2年度より休止中)

感染防止対策を講じて開催しました。とても貴重な時間となりました。

講師の赤堀さん、公開講座に参加してくださった方、またいつも会を応援してくださる皆さまにあらためて感謝申し上げます。

今後も心を込めて「本」を、そして「ことば」を届けていきたいと思います。

本と子どもの発達を考える会

本と子どもの発達を考える会 病院や特別支援学校などで、長年、本を届ける活動を続けてきたメンバーで2010年に設立。 支援の必要な子どもたちへの絵本の読み聞かせなどによる支援活動、 「支援の必要な子どもたちのための本展」・「いのちの本展」の貸出展示ほか、講演などもおこなっている。 著書『読み聞かせで発達支援 絵本でひらく心とことば』(かもがわ出版)2019.12月発行

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